松本のカルチャーを象徴する存在といえば、毎年秋に開催されるフェス「りんご音楽祭」。毎年150を超えるアーティストが集うこのフェスは、今や日本の音楽シーンをぐいっと底上げするほどに。仕掛け人である古川陽介さんにその裏側を聞いた。

ふるかわ・ようすけ/「りんご音楽祭」主催。大学在学時より18 年間松本に在住。2004 年、パーティーハウス「瓦レコード」をスタート。2014 年、沖縄にミュージックバー「on」をオープン。週末はdj sleeper として全国のパーティーで活躍中。
りんごの時期は、
正月より街が混み合ってますから。
—今年で11 年目を迎える「りんご音楽祭」ですが、ここまで続けてきた原動力は何ですか?
ノリですよ。ノリと無知(笑)。だって、めちゃくちゃ大変でしたからね。こんな無謀なことだと10 年前に知ってたら、たぶんやらなかったと思う。

—「りんご音楽祭」を開くことになったきっかけは、何だったのでしょう?
若い頃からずっとDJ もやっていたし、フェスも好きだった。ただ、10年前って、今みたいにライトなフェスがなかったんです。だから、普段クラブで遊んでる友達を気軽に誘えなかったし、大規模なフェスはアウトドア能力必須で、かつチケット代は高い。じゃあ、自分で作るしかないなと。
—「りんご音楽祭」は、観光地としての松本への貢献度も計り知れませんね。
松本は以前からずっと観光地として栄えてきたように見えますが、それは昼の顔なんです。観光だけではなく昼夜問わず街自体が盛り上がって欲しいと思い、“ 祭” をやることで街を活気づけようとしました。松本のひとはとにかく祭り好きですから。よくも悪くも、

古き城下町というわけです。「りんご音楽祭」としては、夜の部を街中のクラブで開催したり、オススメの店舗マップを配ったりして、遊びに来てくれたお客さんに少しでも松本の街で遊んで欲しいと思っています。松本にはいい飲み屋がたくさんあるので。夜に限って言うと、りんご音楽祭の時期は正月よりも街のお店が混み合ってて、僕たちでさえ入る店に苦労するほどです。
—ほかに、「りんご音楽祭」の特徴というと?
出演者やスタッフも含めて、普段から遊んでるなかで出会ったひとたちに集まってもらうようにしています。外部の制作・運営会社は入れていません。
—全国的に注目を浴びる中、県外から仕事のオファーやコラボの声がかかったことはありますか?
あります。実際に松本以外でパーティーを開いたこともありますが、松本以外の街で成功させるには、普段から来てくれている関係者やお客さんがどれだけ集まってくれるかにかかってます。うちはあくまで“ パーティー”なので、いつもいる面々がいてこそ。みんなが各所でいい感じにやってくれるから成立するんです。

—これからの「りんご音楽祭」について、意気込みはありますか?
毎年変わらず。その年その年で感じたことに正直にやっていくだけですね。