
モデル、プロサーファー、そしてヨガのインストラクターとして活躍をするアンジェラ・磨紀・バーノンさん。現在はハワイを拠点に日本との間を行き来し、さまざまな活動を繰り広げている。そのアンジェラさんが、15年前に3人の仲間とともにスタートしたのが、日本全国の知的障がい児/発達障がい児が参加できるサーフィンスクール「Ocean’s Love」。サーフィンを通じて、「海の素晴らしさ・海の愛・海からのエネルギー」を子供たちに感じてもらい、そして「子供たちが持つ、無限の可能性を見出していこう」という内容のもの。9月21日(土)に、神奈川県茅ヶ崎ヘッドランドビーチにて開催される「Ocean’s Love」では、デイトナ・インターナショナルも全面サポートすることが決定。そこで「Ocean’s Love」を主催する、アンジェラさんに話を聞いてみた。
海が持つ大きな愛、包み込んでくれるような愛…ヒーリングのエネルギーは誰にも平等にあるもの
—「Ocean’s Love」を始めようと思った経緯を教えてください。
私の兄が障がいを持っているんですけど、兄と一緒にこの世の中で暮らしていく中で、障がい者に対しての理解力やサポートのなさを感じていて、そこに幼いながらも悲しい思いをしていたんです。それで自分が大人になって、もっと障がい者に対してサポートしたり、理解ができたら、私の兄もそうですし、皆が住みやすい世の中になるのではないかなと思っていて。私がハワイに移住したときに感じたことが、ハワイでは障がいを持っていたとしても、健常者と同じような機会やチャンスや権利があるということだったんです。人々も「障がい者だ」という態度ではなく、隔てのないごく普通の世界がそこにあって。

その頃、私はプロサーファーになっていて、カリフォルニアを拠点に活動をしている「Surfer’s Healing」という自閉症の子に対するサーフィンスクールが、ハワイにきたときにボランティアとして参加をしたんです。自閉症の子供たちなので、その環境に慣れるのに時間がかかる。だけどボードに乗って波に乗ると、本当に別人のような笑顔を見せてくれて、私もそれを見て「ワオ~ッ!」となったんです。私がいつも感じている海からのエネルギーやパワーを、子供たちは私よりももっとストレートに感じるんだということを知って、私がプロサーファーとしてやるべきことはこれなんだと。海が持つ大きな愛、包み込んでくれるような愛……ヒーリングのエネルギーは誰にも平等にあるものなんだと。

― 海にはどんなエネルギーがあると思いますか。
私は18歳のときにハワイに1人で移住したんですけど、誰も知り合いがいなかった中で、そのときに私のホームシックの心を癒してくれたのが海だったんですね、なので、常に腕を広げて待ってくれている大きな愛、というのが私にとっての海で。そこに行けばいつもいてくれて、私が元気がなければ、元気にさせてくれて。そのときの波のコンデションによってはチャレンジなときもある。それと海の中でサーフィンをしていく中で、私は人生の大事なことを学んでいるんです。まさに「Mother Nature」。私にとって海がそういう存在です。

―海から教わったことはなんですか?
やっぱり流れに逆らわずに乗っていった方がいいということ。海にはカレントがあって、そのカレントに乗っていくと海にヒュッと出られる。でもカレントに乗らずに、それを知らずに逆にどれだけ頑張っても沖へ進めないときがあって。自分の人生の中には、こういったウェーブがあって、そのウェーブに乗り身を委ねるということがとても大事で。それに逆らって力を入れても、逆にうまくいかないということが学んだことのひとつですね。

「Surrender=身を委ねる」ことだったり、「Connect=繋がる」ことの大切さ
―逆らってしまったときは、前に進めないということですね。
そうです。だから「Surrender=身を委ねる」ことだったり、「Connect=繋がる」ことの大切さ。海と繋がり、ひとつになることによって、波を上手に乗りこなせることができる。でも私が海と繋がることができなかったら、すごく波はいいのに、調子が悪かったりするんですよ。あとは感謝の気持ちですね。海に対してもそうですし、一緒に海に入っている仲間たちや、ポイントの人たちに対して。自分が感謝の気持ちを持ってそこに行けば、暖かく迎えいれてくれる。でも感謝の気持ちがないと、やはり相手も私を受け入れてくれなかったりします。

―これまでに開催をしてきた「Ocean’s Love」で、何かエピソードはありますか?
この間、伊良湖で開催をしたんですけど、伊良湖は開催をして来年で10周年になるんです。以前に参加した子供たちもどんどん大きくなっていて。私たちがやっているプログラムのひとつに、お仕事体験という「Ocean’s Love」に参加した子供たちが、社会へ出る前に学べる機会を作っているんです。それと同時に、ボランティアの人たちも、どんなことをするのかを知るために、お互いが学び合えるような時間になっているんですね。今回、小学生のときに初めてOcean’s Loveに参加してくれた男の子が、お仕事体験としてバーベキューを担当してくれました。まだ小さくて無邪気で常に笑顔だった姿を私は見ているんですけど、16歳になったのかな。「こんなに大きくなったんだ」と話をしていて、彼も一生懸命バーベキューを作ってくれて、そのお仕事体験が終わった後に、迎えにきたお母さんが「この子のこんな笑顔を久しぶりに見ました」と言ったんです。昔は本当にいつも笑顔だったのに、成長していく中でどんどん笑顔がなくなっていたそうで、それをお母さんは心配していたので「笑顔を見ることができてよかった」と言っていて。そのときに、子供たちが成長していっても笑顔でいられる環境を作ってあげることが「Ocean’s Love」のひとつの使命なのかなと思いました。

―参加しているボランティアの人たちは、どのような勉強を事前にするのですか?
「Ocean’s Love」は、私とプロボディボーダーの薫(鈴木薫)さんと、私たちが所属する「Local Motion」というサーフブランドの担当者であった阿比留さんの3人で始めたんですけど、子供たちの笑顔を見たい、海を感じてサーフィンをしてもらいたいというシンプルなところから始まったので、最初は3人ともまったく多くのボランティアさんに参加してもらうことを想定していなかったんです。でもどんどん進んでいくうちにボランティアさんが必要になってきて、それでボランティアさんも参加できるシステムにしたんです。ボランティアさんからいただく話が、子供たちに元気をあげようと思っていたら、逆に子供たちから元気をもらったということが多いですね。サーフィンスクールのシーズンが始まる前にはボランティアさん向けの勉強会を行っていて、自閉症とはどういうものなのか、あとは障がいを持っていることは、どういう風に接するべきなのかとかということを学んでもらっています。フィロソフィーカードというものがあるんですけど、やはり人間だから、毎日パーフェクトに過ごすことはできない。だからこそ、そのフィロソフィーカードにあることをリマインドしていくことが大切というか。あとは、私自身も参加して、子供達の笑顔で私のラブタンクがいっぱいになっていくことがとても嬉しいです。

お互いの経験をシェアできることが、大切な時間
―ハワイでも活動をされているようですが、どのようなプログラムを行っているのですか?
ハワイを感じてもらえるよう2つのプログラムがありまして、ひとつは、日本で「Ocean’s Love」に参加した人たちの次のステップアップとして、ハワイでサーフィンを行うという。障がいのあるお子さんは誰でも参加できるようになっています。もうひとつは、今ハワイではホームレスの問題が大きいのですが、ホームレスのシェルターにいる障がいのある子どもたちにサーフレッスンをするという。その2つのプログラムがあります。だけどハワイは私1人なので、進むペースがすごく遅いんです。

―「Ocean’s Love」で、今後やってみたいことや、活動で広げていきたいことはありますか?
今でも、全国の海が障がい者フレンドリーになることが夢なので、できる限り「開催地を広げていくことは目標ですね。それが私の日本の「Ocean’s Love」に対してのこれからの思いで。ハワイの方の目標は、何年も先になると思いますが「Ocean’s Love」のホームを持ちたくて。そこは日本からくる障がい児のご家族がステイできたたり、ローカルや世界中から障がい児を持った家族もくることができて、コミュニケーションをとれる場所になればいいなと。「Ocean’s Love」もそうですし、私も大切にしていることが、”Connect=繋がる”ということなので、やはり親御さんたちが繋がりあえて、そこでお互いの経験をシェアできることが、大切な時間だと思うんです。

― 最後に、アンジェラさんにとって幸せとはなんですか。
私にとって、幸せとは。私がこの世を去っていくときに、私が生まれたときよりも、私がこの世を去るときの方が、少しでも愛が増えているということを、知れて、感じられて去ることができたら……幸せかなと思います。
Ocean’s Love
サーフィンスクール
|日程|
9月21日(土)
|開催場所|
茅ヶ崎市 ヘッドランドビーチ
|オフィシャルページ|
Text_Kana Yoshioka