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アートに愛される街「大阪」

大阪はコンパクトな街だ。2大商業地である梅田を中心とした「キタ」エリアと難波を中心に広がる「ミナミ」エリアの距離は約5㎞と近く、回遊性の高さは人と人の接点を生み、多様な文化が交わることでアートも独自に進化してきた。他のどの街とも違い、どこまでも挑戦的で、独創的で、濃い〜大阪アート。自分自身が面白いと思う表現を求め、ジャンルやスタイルの枠を越え横断的に活動する、大阪が生んだ稀代のアーティストたちをご紹介!

彫紅 アメリカから来たヲタトゥー伝道師。

ヲタトゥーの第一人者、彫紅さん。日本のアニメや漫画好きが高じて、2008年頃からヲタトゥーを彫り始めたという。「当時、日本のオタクの人たちには刺青を入れる文化がなかったんだけど、外国にはアニメが好き過ぎて、自分の体にアニメのキャラを彫っちゃう人がいたんです。でもアニメ専門の彫師がいなくてね。ネットで流れてくるヲタトゥーはめちゃ下手くそだった。それを見て、オタクが馬鹿にされてると思って。なぜ誰もうまく彫らないのかと。ちょっとだけ頑張ったらキレイに彫れるはずなのにね。なら自分が頑張ってみようと思って」。地道な活動が花開き、ヲタトゥーは今や世界中に広がった。現在は、ストリートとオタクカルチャーを融合させたブランド「Invasion Club」も始動させるなど、オタクとノンオタクの垣根を壊し続けている。

PROFILE 1978年生まれ、アメリカ出身。ミネソタ大学日本語学科卒業。2004年、彫渉氏に弟子入りし、2007年に彫師デビュー。2014年に独立する。大阪・日本橋でアパレルブランド「INVASION CLUB」も運営する。
Instagram:@horibenny

BAKIBAKI “BAKI柄”で世界を股にかける画家。

ミニマルな直線で描かれる「BAKI柄」をシグネチャーに、多様な表現を試みるBAKIBAKIさん。東京での活動を経て大阪に「十三光スタジオ」を構えたのは2015年のことだった。「この場所は元々、祖父がやってた鉄工所の跡地なんです。東京を離れたのはここがあったのも理由のひとつ。先代が残した建物を上手く使えたらって思ってたんですよ」。スタートにあたって、まずは巨大な壁を作った。それをキャンバスに自身の練習はもちろん、現在は若手アーティストを呼び、一緒に描くことで交流の場にしている。そんなBAKIBAKIさんだが、大阪に戻ったのにはもうひとつ大きな理由があった。大阪万博だ。「吹田出身で子供の頃から万博公園に立つ太陽の塔を見て育ちました。その時に貰った影響で自分はここまで来た。だから2025年に大阪万博に向けて、次の世代に新しい未来を残したい。その使命感は強いですね」

PROFILE 画家。大阪府吹田市出身。1978年生まれ。京都芸大在学中にライブペインティングデュオ『DOPPEL』を結成。2007年よりソロ活動をスタートし、2015年拠点を大阪に移す。国内外で精力的に活躍中。
Instagram:@bakibaking

KEIGO INAMOTO ブレイク前夜のコラージュアーティスト。

Keigoさんがコラージュを始めたのは20歳の頃、福岡のクリエイティブレーベル「OILWORKS」の作品を目にしたことがきっかけだった。「和歌山で開催されていた個展でPopy Oilさんの作品を見て衝撃が走り、家に帰ってすぐコラージュを作りだしました」。新聞のチラシをキッチン用のハサミで切ったことから始まった創作は、以降独自の進化を遂げ、2年後、世界的に著名なコラージュアカウントにピックアップされる。それが女性の顔を加工した作品だった。「実は中学時代に女子からいじめに遭い、女性が苦手になり、当時はそのフラストレーションで作品を作ってたんです」と過去を振り返る。創り続けるうちに、女性不信は消え、現在はより複雑で抽象的な世界を表現する作風へとシフトした。「これからは自分の本能的な部分を具体的に表現したい」。有名ファッションブランドともコラボレーションするKeigoさんの作品が街にあふれる日は近い。

PROFILE 大阪府和泉市出身。1994年生まれ。ヒップホップカルチャーをベースに、コラージュアートを始め、ヒューマンビートボックスで「りんご音楽祭」に出演したり、映像制作も手がけたりとマルチな才能を持つ25歳。
Instagram:@keigo_im

透明回線 トリオで魅せるライブペイント×映像の世界。

近年はMVやアニメーション制作のほか、「SWATCH 渋谷店」の内外装のデザインを手がけるなど、東京にも活動の場を広げている透明回線。アナログとデジタルを融合させ、空間そのものをひとつの作品として提示するスタイルは、カラフルで生命力に満ち、今回紹介したアーティストの中で、ある意味もっとも“大阪的”と言えるかもしれない。ライブペインティングで必要な速筆と、絵画作品としてのクオリティを両立させつつ、映像や照明で演出も行う。3人からリアルタイムで生まれる密度の高い世界を是非、ライブで体験してみてほしい。

PROFILE 2012年大阪芸術大学で結成。メンバーはうきち(ペイント・デザイン)、SHUN(ペイント・イラスト)、としお(映像・音響)の3名。ライブペイントとプロジェクションマッピングを組み合わせたパフォーマンスで、各所から高い評価を受ける。
Instagram:@towmeiline

チョッパー DIY精神を持つスケーターアーティスト。

スケーターは、普通とは違った角度から世界を見ている。壁や縁石、階段の新しい使い方を編み出し、何でもないスペースだって遊び場に変えられる。その発想を生むのはきっと“楽しみは自分たちで作る”というスケーター独特の哲学。そんなDIY精神を体現するスケーターがアメ村にもいる。スケートチーム「OSAKA DAGGERS」のリーダー、チョッパーさんだ。スケート技術もさることながら、自身のショップ「WHATEVER」で販売するオリジナルのTシャツやギアは、そのクオリティの高さに圧倒される。どのアイテムにも、決まってパンクなメッセージが描かれているのも特徴的。真の想像、創造、調和がそこにはある。

PROFILE 1973年生まれ。大阪府出身。日本で唯一の国際プロスケートボーダー。パンクとスケートボードをバックボーンとしたインディーズブランド「WHATEVER」も運営する。

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